そんなことよりも、今の何気無い会話の中にあった、あるポイントに気が付いた。

『酒飲むの?』

彼のこの言い方に含まれた意味は、きっとこういうこと?



「ユウくんは? お酒、好き?」



私が尋ねると、お冷やを静かに置く。



「……うん? あんまり。付き合いで飲む程度かな」

「仕事の接待もあるし、大変だね」

「それは、まぁ。でも、人による。例え、仕事でだとしても、楽しい人は稀には居るし」

「そっか。さすが営業さん」

「いや、全然」



これでもいつもに比べたら珍しく、そこそこ会話が続いている方だ。

これは、吾妻さんのお陰かも。

もう一押し、何か行ってみよう。



「ねぇ──」

「なんかさ──」



私の声に、ユウくんの声が重なった。

2人してハッとして、話そうとしたのを止める。

私の方は、行き当たりばったりなことを言おうとしていただけだ。

手振りで譲る。



「いや、なんかさ……最近、みさおちゃん、急に変わった気がして。何かあった?」



きっかけなら、貴方ですが。

貴方の浮気現場を目撃してから──。

『彼氏さん。本当に浮気だったのかなぁ』

突然、吾妻さんの顔が浮かんだ。

あの時の吾妻さんは、いつもの私をおちょくる様な笑顔ではなく、真剣な表情だった。

まさかとは思うが、私よりも真剣に考えてくれていたような気がする。



「それは……」



私の言葉を待つ彼の無表情の中に、ほんの僅かに見えている好奇心。
 
それが純粋なものなのか、はたまた、面白がられているのかは分からない。

私を急かす動悸に、そっと息を吸い込み、静まる様に促す。



「私、このままじゃ駄目な気がして」

「……何が?」