わたし、BL声優になりました

「おお。今月も大量大量。……って、ん? おい、赤眼鏡。お前また勝手に手紙読んだな」

「これも仕事なので」

 大量の手紙を嬉しそう眺めていた黒瀬は、手紙の封がすでに切られていることに気付き、赤坂を軽く睨み付けた。

 しかし、赤坂はその態度に慣れているのか、至極冷静な返答をする。

「いやだから、これじゃ意味ないんだって。俺は肯定的な意見よりも、否定的な意見が聞きたいんだよ。そもそも、エゴサしてるからな」

 エゴサってエゴサーチのことですよね。
 すごいな、この人。自分の否定的な意見も、きちんと目を通せるタイプの人間なんだ。

 強靭なメンタルの持ち主なのか……。

「はぁ……。エゴサも程々にしてください。後で深く傷付いても知りませんよ」

「分かってるって。じゃ、そこの後輩くん、また後で」

 黒瀬は赤坂のため息を聞き流し、ゆらぎに不穏な挨拶を残して、自身の部屋へ消えて行った。

「セメルくんが失礼をしてすみません。では、部屋へ案内しますね」

 程なくして、ゆらぎが案内されたのは、ドアに三号室と書かれたプレートが貼り付けられている部屋だった。

 赤坂が解錠して、室内へ足を踏み入れる。

「ここが白石くんの部屋です。生活に必要な家電品は用意しているので、好きに使ってください。それと、これが鍵です」

 解錠する際に使われていた鍵を手渡される。室内を見渡すと間取りは広く、2LDKはある。

 以前のボロアパートの1DKから、ずいぶんと大きくランクアップした。

「それで。なんですが、その……ちょっと言いにくいことが有りまして……」

「何でしょう? もしかして、アレが出るとかですか」

 事務所内の寮だし、幽霊の類いが出るとは思えない。となると、残されるのは……虫だろうか。

 ゆらぎが脳裏で色んなことを考えていると、赤坂がまたもや、エスパーの如くゆらぎの考えを読み取り解説をする。

「あ、幽霊とか虫の類いではなくて。……その、セメルくんが一号室なんです」

「はあ」

 何だか、いまいち話がよく分からない。

「なので……女性物の下着は極力隠して欲しいんです」