ウグイス先輩のことを男性だと認識はしている。けれど、異性として意識していたかと問われれば正直なところ、分からない。

 告白されたからといって、意識が簡単に変わるわけでもない。

 ウグイス先輩が、私に好意を寄せているなんて、思ってもいなかった。

 いつもみたいに、冗談めかしているのかとも思ったが、そうではない。この空気は明らかに違う。

 いくら鈍感な私でも、それくらいは理解出来る。

 それでも、ゆらぎは緑川の想いに答えることは出来なかった。

 簡単に答えを出せるはずもない。
 
 身の潔白を証明されるまでは、ウグイス先輩を疑っていたのだから。

 そんなゆらぎの迷いに気づいたのか、緑川は微苦笑する。

「返事は今じゃなくてもいいよ。突然だったし。で、どうする? 黒瀬からのラブコール」

「……行きます」

 ゆらぎはゆっくりと頷いた。

 緑川に問われる前から、ゆらぎの決意はすでに固まっていた。いずれ、こうなることを心の何処かで覚悟していたのだ。

 例え、黒瀬にすでに正体が知られていようとも。

「行くの? 俺的には行って欲しくないんだけど」
 
「そもそもの発端は、ウグイス先輩のせいじゃないですか!」

「だから、いま後悔してるんだろ。それに加担した君も同罪だからね」

 拗ねた表情で緑川は答える。

「うっ……そんなの……知りませんよ」

 勝手に告白してきたかと思えば、勝手に拗ねて……。これ以上、私を振り回さないで欲しい。

「じゃあ黒瀬に会うために、また女装しなきゃならないね。次はどんなコーデにしようかなー」

 先程までの雰囲気とは打って変わり、緑川はいつもの態度に戻る。

「結局、一番乗り気なのはウグイス先輩じゃないですか……」

 ゆらぎは自身の感情を隠すように、緑川に悪態をついた。