「いえ……」
「まだ、時間あるし、近くのカフェでもいく」
緑川は腕時計を確認すると、ちょいちょいとゆらぎを指で手招く。
「でも……」
「黒瀬のことなら、気にしなくてもいいんじゃない? それに、とって喰おうってわけじゃないし」
そう言いつつも、彼女がいま本当に気にしているのは、黒瀬のことではないのは確かだ。
きっと、久し振りの長丁場で、少し参ってしまったのだろう。
同業者ゆえに、彼女の気持ちは理解出来る。
「それじゃあ、少しだけ付き合ってもらえますか」
「うん。僕は構わないよ」
緑川は遠慮がちに、お願いをしてきたゆらぎを快く受け入れた。



