「えっと……」
「本名で呼んで欲しいって話」
「……英知、さん」
乾いた唇で、ゆっくりとその人の名を呟く。
「さん付けもいいけど、呼び捨てでもう一回」
けれど、ねだるように催促されて、ゆらぎは上擦りながらも彼の名前を重ねる。
「えい、ち……」
勇気を振り絞り、呼び捨てたものの、肝心の本人から返事はない。
振り返ろうとすると、視界を大きな手のひらでそっと遮られた。
「あー……。予想外の破壊力だった。悪い」
「黒瀬先輩、これじゃ、見えないんですが」
目隠しをされたまま、ゆらぎは問う。
「呼び方戻ってるし。でも、今は俺を見るの禁止な?」



