「あのー黒瀬先輩? そろそろ離して欲しいんですが」
「嫌だ。離したら、お前自分の部屋に戻るだろ」
黒瀬の部屋で、後ろからぬいぐるみのように抱きしめられ、ソファに座ったまま、身動きが取れなくなっているゆらぎは、困惑していた。
私はいつまで、この体勢でいればいいのだろう。
黒瀬に観たい映画があると言われ、部屋に来てみれば、この状況。
確かに映画は観ている。しかし、ここまで密着しなくてもいいのではないか、とゆらぎは思う。
黒瀬は甘えているのか、ゆらぎの肩に顎を乗せ、本当に観ているのかも分からない映画を眺めている。
ちなみに、逃げないようにする為か、黒瀬はゆらぎの体を両腕で、がっちりとホールドしていた。
さすがに二時間もある映画を、この体制のまま見続けるのはツラい。
そして、どうしてこんな時に限って恋愛映画なのか。
それともわざと?
そうだ。こうなったらあれだ。あの手段を使おう。
ゆらぎは脳裏で閃いた作戦を決行することにした。



