「ちょっと、待ちなさい。銀次。誰か忘れてはいなくて?」
「あ」
「あ。じゃないわよ。誰がここまでの段取りをしてきたと思ってるの。挨拶くらいさせなさい」
口を挟まず大人しく静観していた為か、存在を忘れられていた九十九院は、弟の銀次に鋭い指摘を浴びせる。
今回の件で、この事務所に最も貢献したのは九十九院トキだ。
フリーで活動していた彼女は、元々個人事務所を設立させる予定はなかった。
だが、今回の一件で、銀次の事務所存続が難しいことを知った九十九院は、連名という形で、新しい事務所設立を買って出たのだ。
だが、その為には、ある程度の時間を必要とした。
この業界から立ち去ろうとするゆらぎを引き留めたのも、全てはこの日のため。
赤坂にも協力を仰ぎ、急ピッチで作業を進めて、なんとか今日という日に漕ぎ着けたのだ。



