わたし、BL声優になりました

 必死過ぎるだろうか。
 情けないと笑うだろうか。

 いつもの先輩じゃないと、幻滅されてしまうだろうか。

 ゆらぎからの返事を待ちわびる、この一秒すら心は不安で埋め尽くされていく。

「……ごめんなさい、勝手に事務所を辞めて。居なくなって。黒瀬先輩が引き留めてくれていたのに」

 黒瀬は続く言葉に耳を傾ける。一言一句、聞き逃さないようにと。

「私自身、少し考える時間が欲しかったんです。事務所を辞めて後悔がないのなら、このまま姿を消すつもりでした。でも、出来なかった……。

 黒瀬先輩の姿が脳裏に浮かぶんです。忘れようと思えば、思うほど……先輩に会いたくて。声が聞きたくて。だから、私──」

 最後の言葉を聞く前に、黒瀬はゆらぎの唇を自身の唇で塞いだ。

 軽く触れるだけの、優しいキスだった。