「セメルくん。赤坂です。田中社長がお呼びですので、社長室まで来てください」

「分かった……」

 ドア越しに用件を伝えられると、気だるい雰囲気をまとったまま部屋を出た。

 社長室の前で立ち止まり、軽くノックをする。

「どうぞ」

「失礼します」

 革製の椅子に腰掛けていた銀次は、黒瀬を呼び寄せると、唐突に世間話を始めた。

「最近、調子はどうかな」

「はっきり言って良くないです。それより、用件は何ですか。ここから出ていけって話ですか」

 黒瀬は苛立ちに任せて言葉を紡ぐ。