「わぁ、遥瀬にそんなにみつめられたら……俺、嬉しすぎて泣いちゃう」
「わぁ、湊川クン変な人~」
わざわざ『クン付け』をして、高い声で言うと、湊川は大袈裟に肩をおとした。
「……俺、悲しすぎて泣いちゃう……」
湊川は目もとを押さえたけれど、あたしは耳の上で2つに結った、少しカールしている髪をなでるように手ぐしでとかしながら、笑ってみていた。
「湊川、今年はいくつ、チョコレートもらうのかな」
去年は、高校1年生だというのに……3年生の先輩にまでもらっていた。
「去年は行列ができてたよね」
手作りチョコレートから、高級チョコレートまで、さまざま。
渡したい人たちが、湊川の前で長蛇の列をつくっていたのだ。
その頃は違うクラスだった。それに、イケメンになんて興味がないから……あ、こんなに人気なひといたんだ~レベル。
そんな人が、今、目の前にいるなんて。



