君にサヨナラ

━ポロッ

「あ、れ…」

どうしたんだろう…

目から涙が…溢れて止まらない

「嘘。止まってよ…」

服の袖でゴシゴシ目を擦った


「お姉ちゃん泣いてるの?」

すると突然後ろから声をかけられた

びっくりして振り返ると

小学校低学年くらいの小柄な男の子が
立っていた

「あ、ううん。大丈夫だよ
それより、君はどうしたの?」

よく見ると病院のパジャマを来ている

肌も白くて、腕や足が細すぎる

顔はそこそこ整っていて可愛い

「僕はいつもここに座ってお兄ちゃん
を待ってるんだ」

「お兄ちゃん…君、お兄ちゃんが
いるんだね」

男の子は街の方を見ながら私の隣に
腰掛けた

「うん!僕のお兄ちゃんね凄い
かっこいいんだよ!…でも…」

目をキラキラさせながらお兄ちゃんの
話をしていたのに…

急に男の子の顔が曇り、黙ってしまった

「どうしたの?」

私は優しく問いかけた

しかし、男の子の口からは衝撃的な事が
告げられた

「僕、ママがいないんだ…」

お母さんが…いない?

「ママは、僕がまだ小さかった頃に
出て行っちゃった。パパも仕事ばっかで
家に帰ってこないんだ」

「だから…お兄ちゃんが学校行きながら
バイトして、僕の治療費出してくれて…
面倒まで見てくれてるんだ…」

「…そ、うなんだ」

あまりにも衝撃的な事だったから
なんて言ったらいいのかわかんなかった

「だからね、僕早く病気治して
お兄ちゃんのお手伝い沢山するんだ!!」

男の子はニカッと白い歯を見せて笑った

「僕凄いね」

「どうして?」

私は素直にこの男の子が凄いと思った

「私もね、お父さんが死んじゃったんだ
お母さんも私の為に朝早くから遅くまで
仕事してくれてるんだ…」

「…」

男の子がなんて返したらいいのか
困っているのはわかった

でも、止まらなかった

「私ね…あと少しで死んじゃうんだ…
だからね、せめて残りの少ない時間は
お母さんに楽してもらいたいし
もっと沢山話したいって思うんだ…
でも、君は病気と頑張って戦ってる
でしょ?それが凄いなって…
ごめんねこんな話しちゃって」

「お姉ちゃんもうすぐ死んじゃうの?」

男の子は少し悲しそうな顔をして
私の方を見てきた

「そうだよ。検査した時に先生に
言われちゃったんだ」

「…怖くないの?」

「…え…?」

「だってお姉ちゃん死んじゃうんでしょ
… 怖くないの?」

怖い…?

どうなんだろう…

私は死ぬのが怖いのかな…

「わかんないや…でも、君はお兄ちゃん
の手伝い出来るように絶対なれるから
だから、頑張れ!」

男の子の質問にはちゃんと答えられ
なかったけど

男の子は笑顔を見せてくれた

純粋で眩しい笑顔だった


「おーい。亮ー!」

「あ!お兄ちゃーん!」

その時遠くから声が聞こえてきて
男の子はその声に反応した

私も声が聞こえてきた方を振り返る

そこには

「あれ?南乃花じゃん」

「…學…」

學だった

「お姉ちゃん達友達なの?」

私達の反応を見て男の子は首を傾げた

「あー…友達とゆーか…」

「そ!俺の友達ー!」

私が曖昧に答えようとしたらそれを
遮って學が答えた

「ちょっと…!」

私は學の事を睨みつけたけど
本人は何も気にしてないようだった

「亮。お前そろそろ病室戻るぞ」

「うん!」