・IQ探偵。

イデアルと俺、長月遥は学校からの帰り道だ。

「なあ、
そういえばIQ探偵ムーって児童書あったよな?」
とイデアル。

「確かそう。
あったよ」と長月遥。

「で、わたしはヒロインの夢羽(むう)っぽくなろうとしたんだった。
過去が未来を追想し、未来が過去を追想する」

「それも夢羽が魅力的だから?」と長月遥。
「確かにそうだ。

文芸の解釈(かいしゃく)とは、凝集(ぎょうしゅう)と拡散のメカニズムの一つだ」

イデアルはIQ探偵ムーシリーズの雰囲気に憧れていたのである。いくぶんクラシカルなそれに。

「イデアルは模倣をどう思う?」と俺。
「作品をいかに読み込むか、という点だと思う。模倣や解釈はときに原典を部分的に上回る、とそう思う」とイデアル。