秋だった。
教室。じゃがいものクッキー。

「小説を書くって何だろうな?」とイデアル。

女子高生だ。
スマホでネット小説を書いていた。

長月遥(ながつきはるか)が答える。

「グーデンベルクによる印刷技術(いんさつぎじゅつ)が出来てから聖書が数十万冊ほど刷られたのよ。
写本(しゃほん)では牧師のミサぐらいしか聖書の権威を伝えることが出来なかった。そして、グーデンベルクの印刷革命のその六十年のあとほどにルターによる宗教革命が起こり、戦火ののち、キリスト教はカソリックとプロテスタントに別れた。

インターネットもおそらく制度(せいど)が完成するためには五十年から六十年が必要だと思う」


「つまりネット小説を完成させるためには日々書き続ける必要があるわけか」

「そしてインターネットも同様に」

その年月をひしひしと実感した。その重みが人生だったのだ。