イデアルと長月遥は将棋をしていた。部室で。
サンドイッチを食べて、暖かい紅茶を飲む。

「そういえば、クラウドゲーム機が出来れば、ゲーム機は今後いらなくなるかもしれないなあ」とイデアル。

長月遥は()の駒を進ませる手を止めて長考。

「そうですね。
そういえば、戦略思考の育成には将棋よりも囲碁が向いているのかもしれませんね」

と長月遥がいった。

「どういうことだ?」とイデアル。
「つまり、将棋では勝負に出過ぎる、というのです。
地合いがある、囲碁のほうが勝敗はより曖昧ですから」と長月遥。

「ふむ」とイデアル。
「つまり、囲碁はプロセスを味わう、ということです」と長月遥。

長月遥は最中(もなか)を食べる。
おやつだ。春。
頭を使うと甘いものが欲しくなる。

そういうものだ。