天地(あまつち)(あま)ふる】

イデアルは強い太陽が照らす梅雨の晴れ間を怪訝(けげん)に感じていた。

梅雨は天水をダムや土に蓄え、夏の水不足を乗り切るための時期。強雨は災害をやはりもたらすが、同時に雨は恵みでもあった。

イデアルは、アースシーの風を読み、その深く淡々と記された記載の巧みさに舌を巻くことになるのだが、そのゲド戦記を読んで感じたのは、確かに世界には古き善き時代がある、ということだった。

無意識的な世界を背景として描いたファンタジー小説、アースシーの風と、現在の世界の急激な変化には何か因果のようなものをイデアルは感じざるを得なかった。優れたファンタジーはしばしば時代の流れを予感させたものなのだ。

イデアルとは世界の行方を見守るひとでもある。