ヴァンパイア夜曲



その時。ふと、再び誰かの足音がこちらに向かってくることに気がついた。

もしかしたら、仕留め損ねたスティグマかもしれない。

しかし、シドが手に握りしめた拳銃を構えた、次の瞬間。暗闇から現れたのは、ブロンドの髪を乱れさせて駆けてくるレイシアだった。


「ランディ!やっと見つけた…!」


安堵したように呼吸をした彼女は、ランディを抱き上げるシドと倒れて動かないゴードルフに気がついたらしい。

この現場で何が起こったのかを一瞬で察した彼女は、シドの拳銃を見つめて黙り込んだ。


「…う…」


その時、ランディが小さく声をあげた。

意識が戻ったらしい彼にレイシアが素早く駆け寄る。


「ランディ…!…ひどい怪我を…」


「僕は大丈夫…、…シドが助けてくれたんだ」


弱々しい笑みを浮かべるランディに、レイシアは今にも泣き出しそうな瞳で彼を見つめた。


「よかった。君が無事で」


呼吸を落ち着かせて目を閉じたランディは、ゆっくりとその“翠瞳”にレイシアを映す。


「女の子の肌に野蛮な牙を突き立てさせるわけにはいかないからさ。…女好きの流儀としてはね。」


弱々しいながらもいつもの笑みを浮かべる彼に、レイシアは、わずかに肩の力を抜いた。


満月が煌々と輝く中。

穏やかな死相のゴードルフの体が、さらさらと灰になって消えたのだった。