その時、ゴードルフが小さく息をした。
虫の息となった彼の瞳は、深紅ではない。弱々しいしわがれた声が、小さく地下水路に響く。
『…ランディ…すまな…かった……』
絶え絶えに聞こえるその声に、かつての威厳はどこにもない。
うわ言のように続く言葉は、まるで遺言を残すかのようだった。
『……ランディ…、お前に、ずっと…言えなかった、ことがある……。……私は、知っていたんだ……。お前の“父親”が……誰、なのか…』
シドが、はっと目を見開いた。
それを聞いていたランディは、深く息を吐く。
「なんだ…。………そんなこと知っていたよ、昔からね」
倒れこむようにシドから離れたランディは死に絶えるゴードルフに近づき、穏やかで温かい声で小さく告げる。
「言わなくても分かっていたよ。僕は今、執事としてじゃなく“息子”として……貴方を追って来たんだから。」
ゴードルフは、わずかに目を見開いた。
焦点すら合っていない死に際の瞳から、最後の涙が零れ落ちた。
ーーぽたっ…
温かな雫が地面に落ちた時。
ゴードルフの息は絶えていた。



