ヴァンパイア夜曲



「ーー動くな」


低く艶のある男の声が耳に届いた。

刹那の間の後、地下水路に響いたのは一発の銃声だ。


パァン!!


現実に意識が引き戻された瞬間。

倒れたのはランディの首元へ噛みついていたゴードルフだった。


ーードサッ!


ランディも力が抜けて倒れこむ。

その体を支えたのは、拳銃を手にしたシドである。

ランディは、思わぬ来訪者に言葉が出ない。


「どうして、ゴードルフを斬らなかった?お前ほどの腕があれば、噛まれる前に始末することだって出来ただろ」


核心をつくように告げられた問い。

体に走る痛みに耐えながら、ランディはわずかに口角を緩めて呟いた。


「…情が湧いたんだよ」


静かに響いた言葉は、何よりも悲しげな声だった。


「彼は、他人じゃなかったからさ」


その言葉にわずかに碧眼を細めたシド。荒い呼吸をするランディは、それ以上何も言葉を返そうとはしなかった。