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「…はぁっ、はぁっ…」
屋敷を飛び出してから数十分。
ランディは、一人市街を駆けていた。
必死にゴードルフの血の匂いを追うが、ダンピールの彼の嗅覚は生粋のヴァンパイアのそれよりも劣る。
苛立たしげに顔をしかめた彼は、やがて、ぴたりと足を止めた。
その視線の先にあったのは、大きなトンネルだ。水の音が聞こえるトンネルは、まっすぐ地下水路へと続いていた。
「…まさか…」
地下へ降り立つと、むわっ、とした独特の湿気が肌を撫でた。
土埃の被った居心地の悪い地下水路には、真新しい足跡がある。
(…“ビンゴ”!…東か…!)
タッタッ、と響くランディの足音。
水の流れる音だけが耳に届く。
…と、勢いよく突き当たりの角を曲がった
次の瞬間だった。
突然、目の前に大きな黒い影が現れた。
とっさに避けたランディ。飛びかかるように襲ってきた影は、標的を逃しバシャン!と水の中へと飛び込む。
ーーザバァッ…!!
目を見開いて影を目で追うと、水面から顔を出したのは、ずっと追い続けていた“彼”の姿だった。



