間違いない。
ゴードルフを襲った犯人は、カナリックの街で暗躍する“例の男”だったのだ。
(まずい…!)
最悪の事態を知ると同時に、私の脳裏に窓を蹴破って逃げた男の姿がよぎった。
ローガスという男が街に放たれた今、ゴードルフ以外のヴァンパイアもスティグマにされてしまうかもしれない。
しかも、ローガスの毒牙にかかったゴードルフまでもが市街に出てしまった。ここから被害が拡大してもおかしくないのだ。
その時、ランディがふいに立ち上がった。
表情の見えない彼に釘づけになる。
「アルジーン。君は落ち着くまでここにいるんだ。そして、もし、使用人が忘れ物を取りにでも戻ってきたら、旦那様のことは告げずに家に返せ」
「え…?」
目を見開いて顔を上げるアルジーン。
すると、ランディは迷いない声で言い放つ。
「旦那様は僕が追う。…決して、あの人に“罪”を背負わせたりしない…!」
私が目を見開くと同時に、ガッ!とランディを掴むアルジーン。その表情は、怒りと動揺に満ちている。
「お前が、父上を…?!馬鹿を言うな!なんの力も持たないお前が追いかけたところで無意味だろう!万が一襲われでもしたらどうする!止められないくせに、大きな口を……」
「黙って言うことを聞け!」
部屋に響き渡るランディの怒号。
アルジーンでさえ、こんな彼を初めて見たようだ。びくり、と震えて何も言えなくなっている。
ーーぽん。
優しくアルジーンの頭を撫でたランディは、静かに彼へ囁いた。
「僕がどうなったって、お前が怪我をするよりよっぽどいい。ーー“親父”は、僕が救う」



