ヴァンパイア夜曲



「父上が……“スティグマ”に、なっただと……!…?」


アルジーンの弱々しい声が部屋に響いた。

現実を受け止めきれない彼は、足の力が抜けて立てないようだ。


「アルジーン、話せるか?何があったのか詳しく教えてくれ」


動揺を必死で押し込めるようにそう言ったランディは、アルジーンの元へしゃがみ込み、静かに彼を見つめた。

震えが止まらない様子のアルジーンは、気が動転したように、ぽつり、ぽつりと話し出した。


「今日、約束の時間に“奴”は現れた。…やけに色白で不気味な男は…商談の最中に急に態度を一変させたんだ。……奴は、“純血が欲しい”としきりに言いだし、吸血欲が止まらなくなったように暴れ出した。そして、俺を庇った父上が……奴に……!」


紡がれた言葉は、にわかに信じがたい内容だった。しかし、ゴードルフがスティグマとなり、屋敷を飛び出したことは紛れも無い真実だ。

私とランディは、この部屋から窓を破って逃走する“犯人”の姿も目撃している。


「アルジーン!その、旦那様を襲った男の名は?」


ランディの問いかけに、アルジーンは必死に感情を落ち着かせるように吐息交じりに答えた。


「たしか…、奴の名は……、“ローガス”…!」