ーーガシャァァン!!
突然、何かが割れるような大きな音がした。
はっ!として屋敷を見上げると、庭園に降り注ぐのは割れたガラスの雨だ。
ランディに腕を引かれてとっさに遠くの茂みへと逃れると、“二階の窓”から夜の闇に包まれた市街へと飛び立つ影が見えた。
満月に照らされたその影は、見覚えのない男である。
(何…?!)
その瞬間。血の気が引いたランディが、ぼそりと呟く。
「あの部屋……執務室か……!」
とっさに駆け出すランディ。
非常事態に、状況が掴めない私も彼の後を追う。
バン!と玄関の扉を開けると、ふわりと血の匂いがかよった。微量であるが、お互いヴァンパイアの血を持つ私たちは、その危険な香りに、この屋敷で起こった事態の重さを一瞬で悟る。
「旦那様…!」
ランディの口から無意識のうちに言葉が溢れた。
焦りだけが募るように、絨毯のひかれた階段を勢いよく駆け上がっていく。
そして、廊下の突き当たりの部屋の扉を蹴破るように開けた瞬間、目の前の光景に絶句した。
ーー胸元をおさえてうずくまる青年。
見るも無残なほど部屋はひどく荒らされ、カーテンはビリビリ。床に散乱した書類には、血の跡が見えた。



