ヴァンパイア夜曲


くすくすと笑ったランディは、ふと気がついたように私に尋ねた。


「そういえば、シドは一緒に来なかったんだね。てっきり、昼間のようにすごい形相で僕を睨みつけに来るとばかり思ってたのに」


「うん。ちょっと、喧嘩しちゃって。私も、ついムキになっちゃったから。“朝まで帰って来なくても、俺は絶対迎えになんかいってやらない”だって」


「あはは。可愛い喧嘩だね。本当に帰さなかったら彼の拳銃で容赦なく撃ち抜かれそうだから、ちゃんと宿まで送るよ」


立ち上がったランディは、私に向かって手を差し出した。

慣れたような紳士的な仕草に、私は素直に甘えて手を取る。シドは絶対こんなことしないだろうなあ、なんて考えてしまう辺り、私も大概シドに甘い。

帰ったら、ちゃんと謝らなければ。


「表の門から出ようか。使用人達もいない今は旦那様も商談中らしいし、誰かに見つかって怒られる心配がないからね」


“今夜は父上の大事な“商談”があるんだ。また何か父上の威厳を損なうような面倒ごとを引き起こしたら、本当に追い出してやるからな”


そういえば、昼間アルジーンがそんなことを言っていた。きっと、彼も旦那様の側で跡継ぎとして挨拶していることだろう。


「ーーさ。行こうか、レイシアちゃん」


「うん」


…と、彼に導かれるままレンガ造りの道を歩こうとした

次の瞬間だった。