「そこまで言うなら仕方ないわ」


「あ?」


静まり返った寝室に、風がばさりとカーテンを揺らす音だけが残る。

急に大人しくなった私に青年が眉をひそめた、その時だった。


隙をついて身体を引き寄せると、素早く足を払われた青年は、抵抗する選択肢が浮かぶ前にベッドへ倒れこむ。ギシリとスプリングが跳ねて、白いシーツに2人の影が重なった。

このまま素性を知られずに振り切って逃げられると決め込んでいた彼は、まさか女に押し倒されるとは思っていなかったのだろう。


「残念ね。私は普通の女性よりも少しだけ武術の心得があるのよ。みすみす逃すわけには行かないわ。こうなったら、無理矢理にでも貴方に恩を売りたくなった」


私が半ば押し倒すような体勢で見下ろすと、彼は呆気にとられたような顔でこちらを見上げている。


「観念しなさい、シドさん?」