目の前にいるのは、セオドルフ王とタンリオット。
白いタキシードを着こなしたタンリオットは、そわそわと落ち着かないらしい。
きっと、今は少し頼りない彼も、いずれは王として立派に成長してくれる。私はタンリオットを支え、この国を愛さなければならないのだ。
結婚式の入場なのに他の男の人を思い浮かべて胸がいっぱいなんて、天罰が下る。
(もう後戻りなんて出来ない。…忘れなきゃ。全てを)
タンリオットの前で立ち止まる。
ベールの向こうに見えるのは、新しい未来。
手を差し出す彼。その手を取って共に進むのだ。
ここで、私の人生は変わる。
と、一歩、前に踏み出そうとした
その時だった。
絡めた腕を離そうとしない兄。
穏やかだが微動だにしないその表情は、まるで仮面のようだ。
「お兄…ちゃん…?」
つい、ぽろり、と声が出る。
すると、次の瞬間。
いつもと変わらないトーンの兄の声が耳に届いた。
「あぁ、レイシア。一つ言っていなかったことがあった」
「…え、えっと、今はお話なんてしてる場合じゃ…」
私の耳打ち声もさらりと流し、兄はにこりと笑って続ける。
「俺が今日、“どうしてここに来たか”、わかる?」
「へっ…?」



