ヴァンパイア夜曲


落ち着きのある声に、少し照れる。

私よりも六つ歳上の兄はそれなりに人生経験を積んでいるようで、このような式典にも慣れているのだろう。大人の余裕が羨ましい。


(…というか、いつも通りすぎて、なんだか落ち着かないわ。)


「…ん?なに?」


「ううん、なんでも…」


「はは。今さら、お兄ちゃんと離れるのが寂しくなった?」


「そ、そういうわけじゃ…!」


にこにこ微笑む兄。


ーー私は、昨晩不安だった。

もしも、シスコンの兄が私とタンリオットの結婚を認めずに拗ねたり、駄々をこねたり、セオドルフ王に直談判したりしたらどうしよう、と。

しかし、予想以上に穏やかな彼に、拍子抜けしてしまう。

てっきり兄のことだから、もっと騒がしく私を引き止めたり、婚約を結び直した私を怒ると思っていた。


「あの…私に何か言うこととかは…?」


「うん?…そうだなあ…。…“幸せになってね”ってことくらいかな」


まるで、他人事のような言い方。

感情を悟らせない、いつもの笑みに、私は思わず眉を寄せる。


「…それだけ?」


「ふふ。なに?マリッジブルー?」


「違う、けど…」


すると、ルヴァーノは静かに私の髪を撫で、微笑みながら優しく囁いた。


「俺は“レイシアが認めた相手なら”、引き止めたりしないよ」