意味深な一言に首をかしげる私。
少しわがままなところがあるタンリオットの嫁になる私を不安に思って謝ったのだろうか。
もしくは、一度破棄された婚約が私の意思と関係のない形で再び結ばれたことを申し訳なく思っているのかもしれない。
一人、部屋を出る私。そこは、いかにも貴族が住まう城。
ここが私の家になるだなんて信じられない。
“私、タンリオットのお嫁さんになるのか”
そんなことを考えるが、どうにも他人事のように感じられる。
普通、好きな人との結婚式となれば、どんなに準備が大変だろうと朝から気分が晴れやかで、人生で一度きりのイベントに心が舞い上がっているはずだ。
こんなに落ち着いている自分が少し怖い。
「あ…」
その時、廊下に佇む一人の青年が見えた。
腕を組んで寄りかかっていた彼は、私の声に顔を上げる。ノスフェラトゥのピアスが、しゃらんと揺れた。
「お兄ちゃん…」
ノスフェラトゥの軍服を纏う兄は正装だ。ローガスとの戦闘でビリビリで血みどろになったはずの服も、新品に変えたらしい。
彼は歩み寄る私を見つめ、ふっと柔らかく微笑んだ。
「綺麗だね、レイシア」



