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『レイシアさま、お綺麗ですわ…!』
「…ありがとうございます…」
麗らかな春の陽気。
ベネヴォリの街に咲き誇る花。
ウェディングドレスを身にまとった私は、煌びやかな装飾品と柔らかなベールを運んできた城のメイドたちに、にこりと笑った。
今日は結婚式当日。
ついこの前まで、血生臭い戦場にいたなんて、嘘のようだ。
この1週間は、ドレス選びや式の流れの確認、さらには肌の手入れまで、メイドがつきっきりだった。
花嫁修行と言わんばかりにセオドルフ王への挨拶や城の兵士とのコミュニケーションなど、嫁ぐためにしなければならない準備を進めてはいるが、姫”に戻る実感はなかなか湧いてこない。
その時。ふと、控え室の扉がノックされた。
メイド達が出払うと同時に顔を出したのはランディである。ずっと執事の燕尾服や旅の装いだった彼も、今日は正装だ。
「いつにも増して可愛いね、レイシアちゃん。式はそろそろ始まるけど準備はどう?」
「ふふ、ありがとう。ばっちりよ」
そっ、と私の側に腰掛けたランディ。久しぶりの再会に表情が緩む私だが、彼は少し不安げだ。
すると、ランディは私の顔を覗き込みながら、そっと口を開いた。
「…本当に、このままでいいの?」



