ヴァンパイア夜曲



どくん…!!


予想外の言葉に絶句するシド。

ばっ!と口元へ手をやると、八重歯とは言えないほど尖った牙に触れる。

ランディが、さっと鏡を差し出した。

すると、そこに映っていたのは深紅の瞳。それは紛れもなくヴァンパイアの目だ。


「嘘…だろ…?!」


ぽろりと言葉がでた。

確かに、体に流れるのがレイシアの血ならヴァンパイアになってもおかしくない。

しかし、シドはもともと人間だ。突然変異なんて聞いた事がない。おそらく、この国で最初の事例だろう。


「んー、シドはハーフ?ダンピールとも言い切れないよね。でも、人間ではないし…」


腕を組むランディはどこか楽しそうだ。

友人が生きてくれてよかった。生きていれば細かいことなんてどうでもいいじゃないか、といった様子だ。シド本人はそれどころではないのだが。

そうこうしているうちにグラスに注がれる血。ルヴァーノは有無も言わさず差し出した。


「さっさと飲め。これからは避けられない。吸血欲は本能の一つだからね」


「う……」


顔をしかめるシドだが、断ることは出来ない。体はすでに血を欲しているのだ。

しかし、ごくりとひとくち口にした瞬間。シドはカッ!と目を見開いた。