我慢しきれず掴みかかるルヴァーノを、「抑えて…!他の患者さんもいるんでしょう…っ!?」と必死に止めるランディ。
内心穏やかではなかったらしいルヴァーノは、ドサ!と椅子に腰を下ろすと、苛立たしげに足を組んだ。シドに負けず劣らずの殺し屋オーラが溢れている。
一方、絶望の淵に立たされたような表情のシドに、ランディが小さく尋ねた。
「いいの?シド。こんなところでいつまでも寝てて…」
「は?」
「このままだとレイシアちゃん、人妻になっちゃうんだよ?」
人妻というパワーワードに致命傷を負ったシドは、複雑な心境で頭を抱える。
まさか自分が死に瀕している間にここまで事が進んでいたなんて。そんな表情だ。
その時、シドの視界が微かに揺れた。
めまいを伴うだるさと、強い喉の渇きに襲われる。
(なんだ…、これ…?…!)
今まで感じたことのない感覚に、ぞくりと震えるシド。ランディはそんな彼の顔色に不安げに表情を曇らせたが、医者であるルヴァーノは何かを察したようにシドを見つめた。
おもむろに椅子から立ち上がるルヴァーノ。
やがて、何かを棚から出したルヴァーノは、コツコツとベッドに歩み寄り、ドサ!とサイドテーブルに荷物を降ろした。
シドが見慣れない“パック”にきょとん、とすると、目を細めたルヴァーノはさらり。と信じられない言葉を言い放った。
「これは血のサンプルだ。四種の血液型と俺の好みで色々用意してやった」
「は…?」
「“は?”じゃない。さっさと飲んでみろ。君もヴァンパイアとなったなら、吸血欲には勝てないだろう」



