ぐいっ!とシドを担ぐルヴァーノ。
彼に続いて立ち上がると、兄はこちらを見ずにぽつりと呟いた。
「こいつの処置は俺がやる。でも、レイシアの体が採血に耐えられないと判断したらすぐにやめるからね」
「…!」
「俺には、妹も大事なんだ」
振り返った兄は、医者の顔であった。
大きく頷いた私を見て、彼は観念したようにシドを担いだまま玉座を出て行く。
やがて、兄が手配していたノスフェラトゥの馬車に乗り、私たちはベネヴォリに帰った。
献血のための針が肌を刺した時、ちくりとした痛みが私を襲う。
私の脳裏に浮かんだのは、神の道に背いてローガスに血を与えたティアナの姿。
ティアナさん。
私、やっと分かったわ。自分の命と引き換えにしてまで貴方がローガスの牙を受け入れた気持ちが。
貴方は、自分を思い出して欲しかったわけでも、好きだと伝えたかったわけでもない。
ただ、大好きな人にまた会いたかっただけなのね。
その腕で、抱きしめて欲しかっただけなのね。
その夜。
シドの手術は夜通し続き、彼に大量の血を与えた私はぷつりと意識を失ったのだった。



