『神?くだらねえ』
『そんなもんこの世にいるわけねえだろ。都合の悪くなった時だけ神頼みして実態のないものにすがるなんて、俺はそんな生き方御免だ』
頭の中に響いたのはシドの言葉だった。
初めて言葉を交わした日。さも馬鹿馬鹿しい、といった表情でそう言い放った彼。
薔薇の廃城で血を差し出し、されるがままだったシド。私を抱きしめた彼が耳元で囁いたセリフが記憶の底から蘇る。
今は聞こえるはずのないシドの声が、そっと近くで囁かれたような気がした。
『この世に神なんていねえよ。周りの奴を救えるのも、自分自身を救えるのも、生きてる奴の出来ることだ』
いつのまにか、涙は止まっていた。
顔を上げて黙り込む私に、ルヴァーノは眉を寄せる。
「レイシア…?」
戸惑うようにそう名前を呼ばれた瞬間。
私は、まっすぐルヴァーノを見上げて尋ねた。
「…血があれば、シドは助かるのよね?」
「え…?」
動揺するルヴァーノ。彼は、私を見つめて続ける。
「その可能性はある、ってだけだよ。輸血を準備出来なければ意味がないと、さっきも…」
「血なら、あるわ」
はっ!としたルヴァーノ。
私の言おうとしていることを察した様子の兄に、私は彼から目を逸らさず言い放った。
「シドの血をもらってきた私の血液なら、適合するかもしれない…!」



