ヴァンパイア夜曲



「…トドメは、奪われたな…」


シドの体に影が落ちた。

ゆらりと立ち上がるルヴァーノが、シドを見下ろして荒く呼吸をする。


「お兄ちゃん…っ!シドが、シドが起きない……!」


ぽろぽろと涙を流す私。無意識に溢れる熱い雫に、嗚咽が漏れる。

ルヴァーノは、シドの首筋に指を添え、静かに脈をはかり出した。


「…弱いな…このままじゃ、一時間も持たない」


「そんな…!」


「なにより出血がひどい。応急処置で傷を塞いで輸血が間に合えば希望はあるが、こいつに合う血液を手配するのには時間がかかる。ベネヴォリに戻ったとしても、血がなければ何も出来ない」


体の力が抜けて、頭が真っ白になった。

シドの指がどんどん冷たくなっていく。

ローガスを撃ったシドは最後に何を見たんだろう。

彼は、最後の力を振り絞ってまで私を守ろうとしたのだ。


『必ずお前のところに戻ってくる』


「……シ、ド……」


あぁ、神さま。

この人は何も悪いことなんてしていないんです。

普段は口が悪くて態度も不良で素直じゃないけれど、彼は人一倍優しくて不器用で温かいんです。

自分よりも周りを優先するような人なんです。

私を一番に考えてくれる人なんです。


私の、大切な人なんです。