ヴァンパイア夜曲


時が止まったかのように微動だにしないローガス。

予期せぬ展開に動揺が走る。

深紅に染まった彼の目に映っていたのは、私が首に下げていたロザリオだった。


『ぐ、あ……っ…!!』


突然、頭を抱えて苦しみだすローガス。

掴まれていた肩を離され、私は床に崩れ落ちた。


胸元から滑り落ちるロザリオ。

その聖なる光が、ローガスの瞳を震わせる。


『ガァァァッ…!!』


ローガスは混乱状態に陥ったように苦しみだした。絶え絶えに聞こえる彼の声。


『ぐわぁぁぁぁ…!やめろ…!…わから、ない…わから、ない…!』


ゴトン!!


その時。ローガスの胸元から、小さな箱が転がり落ちた。


♪〜♫♩♪〜♬〜♪♩♪


反動で開く蓋。そこから流れたのは、綺麗なオルゴールの音色だった。

奏でられた曲に、ロザリオが熱を宿す。


(この曲って…)


はっ、としてローガスを見上げると、彼はぼろぼろと泣いていた。

深紅の瞳からこぼれ落ちる雫。彼は自分がなぜ泣いているのかすら分かっていない。


「…ローガス…」


小さく名前を呼ぶと、彼は苦しげに顔を歪めている。彼に問いかけるように、私は言葉を続けた。


「本当は、覚えているんでしょう…?このロザリオが、誰のものなのか…」