ドッ!と容赦なく壁に打ち付けられる。
ギリギリと掴まれ、かつてローガスにやられた傷がぴりりと痛んだ。
「か…は…っ!」
頭の中を埋め尽くす恐怖。
視界に映るのは、反撃の力もなく苦しげにこちらを見つめる兄と人形のように倒れるシドだった。
シドは動かない。
銃はここにあるのに。
間に合わなかった。
無意識に涙が溢れる。
やっと、追い詰めた両親の仇。
ずっと憎んでいた敵が目の前にいる。
許せない、許せない。
だが、私はこんなに無力なのだ。
大切な人ひとり守れない。
『ガァァッ!!』
ローガスが、牙を剥く。
「や、めろ……!!!」
絶え絶えに聞こえる兄の声。
もはや抵抗するすべもない私が最後にぽつり、と口にしたのは、縋るように無意識にこぼれた言葉だった。
「…神、さま…」
一筋の涙が流れ落ちた。
その瞬間、カッ!と牙を突き立てようとしていたローガスの動きが、ぴたり、と止まった。



