ヴァンパイア夜曲



「シド!!」


思わず駆け寄ろうとした瞬間。

ぐいっ!と白い軍服に抱きかかえられた。


息をのむと同時に襲いかかるローガスの爪。

カシャン!と私の手から滑り落ちる拳銃。

間一髪のところでルヴァーノにさらわれた私は、斬撃を逃れて着地した。


「お、お兄ちゃん…!?」


私は顔を上げて絶句した。

血に染まる白い軍服。

傷を負った兄は呼吸が乱れ、深紅の瞳も揺らいでいる。戦闘が始まってどのくらい時間が経過したのだろう。

シドが倒れてから一騎打ちとなり、彼の疲労度はすでに限界に達している。


『…純、血……』


ゆらり、と立ち上がるローガス。

もはや自我は消え失せ、吸血欲だけが振り切っている。


飛びかかってくる紫紺のローブ。ローガスを迎え撃つルヴァーノだが、首の傷口を再び噛まれ声も出ない。


薙ぎ払われ飛んでいく兄の体。

強く壁に打ち付けられ、「かは…っ」とうめき声をあげたルヴァーノは、ずるずると床に沈んだ。


「お兄………っ!!」


息が止まった瞬間、視界が暗くなる。

目の前に迫るローガス。

はっ!としたその時。奴の鋭い爪が私の肩に食い込んだ。