ヴァンパイア夜曲



その時通信機から光が放たれ、魔法陣が描き出される。

その中に現れたのは、見慣れた黒い拳銃だった。


『レイシアさん、シドを頼むよ』


「えぇ。ごめんなさい、無理を言って。必ず生きてシドに届けるわ」


私は、ぎゅっ!と拳銃を抱きしめ、勢いよく部屋を飛び出した。

不気味なほど静まり返った廊下。

自分の足音しか聞こえない。


最上階に近づくにつれ感じる物々しいオーラ。そして、同時に私の敏感な鼻がある匂いを嗅ぎつける。


(血の匂い…!)


ぞくりと震えが走る。

無意識にペースが上がる足。

石造りの階段を駆け上がると、私は勢いよく玉座の扉を開けた。












そこに見えたのは、あの夜と同じ惨劇。

ひび割れた大理石。

崩れる壁。

血の跡が至る所に飛び散り、カーテンはビリビリに破れている。


そして、目の前に倒れているシドの姿。

黒コートを赤く染める彼は、微動だにしなかった。