それはウォルマーにとって予想外の提案だったらしい。私の隣に座るランディも、驚いたように目を見開いている。
『えっ…と、確かに転送することは可能だけど…。まさか、君がシドの元へ届けるつもり?』
すると、それを聞いていたランディが、ばっ!と私の肩を掴んで声をあげた。
「ダメだ、レイシアちゃん!危険すぎる!城に追っ手のスティグマがいないとはいえ、ここはローガスの居城なんだよ?シドの元に向かえば、純血を持つ君はきっと無事では済まない…!」
確かに、ランディの言う通りだ。
私は、ローガスに狙われている純血の持ち主。自分を守るすべもなく戦地に赴いたところで、何も出来ない。
だが、こうしている間にもシドが危険にさらされているのだ。
心の中には理性では抑え切れないほどシドへの気持ちが溢れていた。
「シドは言ってた。必ず戻ってくる、って。…私も分かってるよ?シドは簡単に生きることを諦めるような人じゃないし、側にお兄ちゃんがいるってことも」
“でも”
強く言葉を続けた私は、瞳を揺らすランディに向かって凛と言い放つ。
「武器がなければシドは戦えない。会えなくなるなんて、絶対に嫌…!ここでただ神に祈るだけなんて私には出来ない…!」
ランディは言葉を詰まらせた。
引き止めなければいけない立場なのは分かっている。しかし、彼は何も言えない。
大切な人を亡くした過去を持つ彼女が二度と仲間を死なせたくないと思う気持ちの大きさが、痛いほど分かってしまうからだ。
ランディは、苦渋の決断をしたように、そこからは私を止めようとしなかった。



