ヴァンパイア夜曲



ボタ、ボタボタ…っ!


ローガスの白い肌から血が流れる。しかし、男はゆらりと立ったままだ。

シドの銃撃をすんでのところで躱し、トッ…、と床に降り立ったルヴァーノは、かくんと小さくよろめいた。

噛まれた首筋を押さえ、荒い息を吐くルヴァーノ。未だ致命傷を負わせられないことへ若干の焦りを募らせる彼は、ローガスから目を逸らさずにシドへ低く告げる。


「ローガスの終わりは近い。一気にケリをつけるぞ…!」


「あぁ…!」


同時に駆け出すシドとルヴァーノ。

敵は動かない。

獲物へ照準を合わせて弾かれるよりも、撃ち続けて逃げ場をなくす方が有利だ。

パァンパァン!!と乱れ飛ぶ弾丸を弾くローガス。わずかに反応が遅れだした彼の隙を突き、上空に飛んだルヴァーノは勢いよく踵を落とす。


玉座に響く鈍い音。

重い一撃を食らったローガスが『ぐはっ…!』とよろめいた瞬間、シドがローガスの間合いに踏み込んだ。


紫紺のローブを貫く銀の弾丸。

既視感に襲われたように、はっ!と表情が変わるローガス。


「撃ち抜けシド!奴は次の一撃で死ぬ!」


勝利の確信を得たルヴァーノの声。

しかし次の瞬間。シドの手元から光がこぼれた。


パキン!と弾け飛ぶ魔法石。


電池の切れたように鉛と化していく拳銃に、シドは言葉を失う。


「っ、クソ…!“また”……!!!」


と、その時。

ぐわん!と見開かれたローガスの深紅の瞳がシドをとらえた。シドの瞳に映ったのは、破れたローブの合間から見える、かつて杭を打ち込まれた時にできたであろう胸の傷跡。


『私は、もう、二度と死なん!!』


シドが、はっ!と呼吸をした瞬間。

ローガスの牙が、黒いコートへ突き立てられたのだった。