ヴァンパイア夜曲


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2人分の足音が静まり返った廊下に響く。

どうやら、城内のスティグマは先ほどの爆発であらかた片付けたようだ。

ここは、いわばプライベートゾーンと呼ぶにふさわしい空間。ローガスは無粋なスティグマが上階に足を踏み入れることを許していないらしい。

お互い終始無言で歩く中、シドはちらりと半歩前を歩くルヴァーノを見上げた。


「大丈夫なのか?」


「ん…?」


「その腕の傷だよ。今から宿敵との決戦だってのに、エリザさんに自分の血をやっただろ」


ちらりと捲った腕に目をやったルヴァーノは、わずかにまつ毛を伏せる。


「問題ない。俺は人間ほどヤワじゃないんでな」


さらりと返された言葉。それ以上は何も言わないルヴァーノの表情からは、感情は読み取れなかった。

置いてきた部下を気にかける素振りも見せないようだ。本当にこの男は読めない。


やがて最上階に辿り着くと、豪華な装飾の施された扉の前に立つ2人の影が廊下に伸びる。


「ルヴァーノ、大丈夫か」


「さっきも言っただろう。俺をお前と一緒にするな」


「そうじゃねえ。…この先に、奴がいる」


シドの言葉に、ルヴァーノはぴくりと肩を震わせた。

シドは、隣をちらりと見上げる。


「お義兄さん、瞳孔開いてますよ」


「はは。ほんと?まずいな。でも、俺はオトナだからね。怒りに我を忘れて暴れたりはしないよ。……これ以上ふざけた呼称で俺を呼ぶなら、お前も後で噛み殺すぞ」