どこを見ていいのか分からず視線を彷徨わせていると、何事もなかったかのように立ち上がった兄は、ばさりと脱いだマントをエリザにかけ、ランディに声をかけた。
「すまない。彼女は俺の大切な部下なんだ。ここで死なせるわけにはいかない。手持ちの薬と包帯を置いていくから、君もここに残って彼女の容態を見てくれないか」
ランディは、その提案に、はっ!とする。
彼はちらりとシドを見るが、やがて覚悟を決めたように頷いた。
わずかに安心したような呼吸をこぼした兄は、そっと私を見て続ける。
「レイシア。お前もここに残るんだ。この先は連れていけない」
反論なんて出来ない。
私のせいで、エリザは傷を負ってしまった。
いくら腕の立つ兄だとはいえ、ローガスとの戦闘中に私を庇いながら戦うなんてことはできない。
こくりと頷くと、兄は優しく私を撫でた。
「シド。お前は俺と来い。その銃で俺の補佐を頼む」
「あぁ」
ノスフェラトゥの団員は皆、樹海のスティグマと戦っている。唯一の手勢であったエリザも倒れてしまった。
ランディがエリザの元に残るとなれば、ここで兄と共闘できるのはグリムリーパーのシドだけなのだ。
ドサッと私に荷物を預けたシドは、魔法石の拳銃だけを手にして碧眼を細める。
「大丈夫だ。あいつは死なせない。俺も必ずお前のところに戻ってくる」
私の不安を察したようにそう囁いたシド。
これを今生の別れになんかさせない。
きっと、二人は生きてローガスを討つ。
すっと私に背を向けた二人。部屋を出ていく彼らの背中は少し遠い。
と、私が不安げに見つめていたその時。銃のリボルバーを回したシドがさらりと言った。
「じゃあ行きましょうか、お義兄さん」
「………ん?聞こえないな。もう一度、俺の目を見て言えるものなら言ってみろ」
「あぁ、もうっ…!喧嘩してる場合じゃないでしょう!」



