ヴァンパイア夜曲



力強く開いた玄関。

内部は思ったよりも綺麗で、神聖な空気が漂っていた。

物音ひとつしない城内に、五人の足音が響く。


警戒して先頭を進むシドとルヴァーノ。

私を挟んで後に続くランディとエリザも表情が険しい。


♪〜♫♩♪〜♬〜♪♩♪


その時。ふと、どこか聞き覚えのある音楽が聞こえた。

最終決戦の場に似つかわしくないその音はどこか優しげで、悲しげで、誰もが言葉を失う。


「…奴はこの上か」


二階へと伸びる螺旋階段を見上げて呟いたランディは、そっと足を止める。

すると、ローガスの気配に全員の意識が向いていた、その時だった。


『ガァァッ!!!』


気配なく飛びかかるスティグマ。

隙を突かれ、足が動かない。

その牙は一直線に私に向かった。


(まさか、純血を狙って…!?)


血の気が引いた瞬間、ドン!と強く体を押される。

勢いよく地面に倒れこむと同時に視界に映ったのは、私を庇い毒牙にかかった白い軍服と、彼女の薔薇色の長い髪。


「エリザ!」


ぐらり、と倒れたのはエリザだった。ひどく動揺した兄の声。

ランディのレイピアがスティグマの胸を貫くが、反撃したのも束の間。城内に現れたスティグマは広間を取り囲んでいる。


(やられた…!!)


エリザを抱きかかえたルヴァーノは、緊迫した表情で指示を飛ばす。


「走れ!」