乱立する木々の向こうに光る鋭い牙。
血に飢えた赤い瞳が獲物をとらえたようにこちらを見つめている。
「…囲まれたか」
「だね。早速お出ましとは、想像よりもずっと危険なエリアらしい」
銃とレイピアを構えるシドとランディ。
現れたのは数十体のスティグマ。ローガスが放った刺客だろうか。
ぐいっ!と引き寄せられる腕。
真剣な表情のシドが短く指示を飛ばす。
「ランディ、お前は遠方のスティグマを狩れ。俺はここから動かずに、近づく敵を狙撃する。」
無言で頷いたランディはわずかに瞳の色を赤く変えた。彼の体に流れる純血が高ぶっている。
臨戦態勢の中、シドが素早く囁いた。
「レイシア。お前は俺から離れるな。怖かったら目ぇつぶってろ」
彼の黒コートに、ぎゅっ!としがみつく。
拳銃の黒い銃口が、まっすぐスティグマに向けられた。
パァン!!
開戦の合図のごとく鳴り響く銃声。
一気に飛びかかってきたスティグマは、全方位を囲んでいる。
地面を蹴って斬り込んだランディ。流れるような剣さばきは一つの無駄もなく敵を貫いた。
しかし予想以上に数が多い。次々と灰と化していくが、その勢いはとどまることを知らないようだ。
乱れ飛ぶ弾丸。
仕留めていく最中、シドがわずかに目を細めた。その視線の先にあったのは、銃に込められた魔法石。
(シド…?)
思わず彼を見上げたその時。
切迫したようなランディの声が森に響いた。
「シド!後ろ!!」
はっ!とした瞬間、振りかざされる爪。
暗闇からの奇襲に一瞬反応が遅れる。
倒れる前方の敵。
背後から迫るスティグマ。
銃を構えるモーションが間に合わない。