ヴァンパイア夜曲



“青年”が私を見た。

距離を隔てて交わる視線。

お互いの呼吸が止まり、見開かれる彼の瞳。

その色は、記憶の中の“彼”と全く同じ色を宿していた。


「ーー“レイシア”…?」


呟かれた声は、確かに届いた。

その名を口にしたのは、シドでも、ランディでもない。今初めて会ったはずの“彼”が、そう呼んだのだ。

すると、旅仲間の二人が何かを言う前に、青年は流れるように地面を蹴る。


一瞬で目の前に舞い降りた青年。

頭一つ分高い位置で、しゃらん、と彼のピアスが小さく揺れる。

至近距離で気づく“面影”。

私と同じブロンドの髪が良く映える整った顔。白い軍服の襟元から覗く鍛えられた体。

すっかり凛々しい青年になっていたが、私を見つめるその瞳は、かつての“兄”そのものだった。


「“お兄”……」


…と、私が彼を呼びかけた

その時だった。


ーーぎゅうっ…!!


強く抱きしめられる体。

思わず声が止まる。

世界の音が何も聞こえなくなった瞬間。震えたような彼の声が、耳元で響く。


「…生きてて、よかった…」