それは、一瞬の出来事だった。
スティグマの群れへと軽やかに飛び込んだ“青年”。
しなやかな蹴りが敵の腹部を直撃する。それは想像の何倍も重い一撃。
一挙で複数のスティグマを吹っ飛ばした青年に、シドとランディも思わず目を見張る。
視界から消えたスティグマは、広場の壁に打ち付けられ次々と灰になっていく。牙を剥いて襲ってくる敵を、慣れた手つきで仕留める青年は、明らかに“格”が違う。
彼の横顔にキラリと光る“ピアス”が、彼の深紅に染まった瞳に呼応して見えた。
「ーー“団長”!住民の避難誘導が終わりました!」
やがて広場に現れた一人の女性。
薔薇色の髪を一つにまとめた彼女は、ノスフェラトゥの軍服を身にまとっていた。
そして、彼女の声を聞いた瞬間。ぴたり、とピアスの青年の動きが止まる。
ーーその時。
広場に残っているスティグマは一体もいなかった。
「“団長”。また一人で終わらせちゃったんですか…?住民の無事が確認できた後は、少しは新人隊員の実践経験用に残しておいてください。」
「あぁ、ごめん。つい。」
遠くから聞こえるその返事に、ぞくり、と体が震えた。
その時、拳銃を手に持つシドが、驚いたように声を上げる。
「“ルヴァーノ”…?!お前、どうしてここに…!」



