ヴァンパイア夜曲



思わずその光景に見惚れていたその時。ふっ、と深紅の瞳がこちらへ向けられた。

思わぬ形で交わる視線。

どきり、と心臓が鈍く音を立てる。


思わず動揺してしまったシドに、青年もぴくり、と肩を震わせた。どうやら、吸血に夢中で来客に気がつかなかったらしい。


ーーちゅ…


女性の首筋に軽くキスを落とした青年は、長いまつ毛を静かに伏せて、そっと告げる。


「ごめん、俺に“来客”みたい。」


顔を上げた彼女に、ふわり、とショールをかける青年。はだけた胸元を隠すように、彼はそのまま優しく肩を抱いた。


「ありがとう。続きはまた今度。」


「はい…」


わずかに顔を赤らめて俯いた彼女は、結構美人だ。こちらへ駆けてきた彼女は、シドに小さくお辞儀をして部屋を出て行く。

まずいところに出くわしてしまった…、と内心焦るシドだが、青年は何事もなかったかのように唇の血をぺろり、と舐めた。


「……悪い、邪魔したか。」


低く声をかけるシドに、視線をこちらに向けた彼は、微笑んで穏やかに告げる。


「ーーいいや?もうだいぶ満たされたところだったからね。」