尚貴は少したじろいで、「難しいのはわかっているのですが」と、付け加えた。

「漫画を描いて生きていたいってことかな?」

 お金はあるし売れなくてもいいから、漫画が好きだから道楽として、ってことならまあわかる。あとは、プロの「漫画家」を自称したいと思う人も多いし、そっちかもしれない。
 愛里が言い直すようにそう訊ねると、

「漫画をただ描いていたいというよりも、自分の描いた漫画を受け入れられてみたいんです。生かされるのではなく。だから、漫画で生きてみたい」

 か細い声が不思議な願望をはっきり紡ぐ。