郡山は少し姿勢を崩す――それまでがあまりにも綺麗な直立姿勢だったのでだいぶ姿勢を崩したように見えてしまうが実際はわずかに首を傾ける程度だけ――と、

「馬鹿にしたつもりはなかったんだよ。正直、今でも、なんでこんなも……失礼。なんでこのような作品をわざわざ一人でここまで大量に運んできて配ろうなんてしてんだか俺にはわからなかっただけで」

 漫画で描くなら、きっとこめかみをぽりぽりとかいているような雰囲気で。

 たしかに、創作者でなければわからないことかもしれない。

「こっちも仕事でやっててさ。わかってくれ。大事なご子息を預かってる立場で、ピリピリしてんだ。帰れと言われて帰るわけにいかない」

 そしてこの人が同人作家の苦労をわからないのと同じように、愛里にもこの人がそんなに真剣にこの場に留まろうとする理由だってわからないのだ。