愛里は帰宅すると、自分の部屋で布団にくるまって、動かずにいた。

 ――フラれちゃった。

 その事実が、重くのしかかって、身動きが取れない。

「エリンギちゃんと付き合うことはできない」

 そう言われた。

 その余裕がない、と言っていた。

 たしかに、夢を追いかける貧しい漫画家志望のなおさんに、余裕があるかと言ったら、ないよね。そうだ。そりゃそうだ。私にだって余裕なんてない。

 だけど、なおさんからのプレゼントのファンアートは、とても嬉しかった。

 習作で作ったものだとしても、夢を追う中でどうにか贈ってくれた、最大級のなおさんらしいプレゼント。しかも、自分のキャラクターを描いてもらってより浮き彫りになるのは、なおさんの才能で、ああたしかに、このなおさんらしさを、私も信じたいなって、思った。

 私、この人のことが好きだな、って思った。

 ねえ、恋人になってもいいでしょう?

 幸せにできないなんて言うけど、私は十分幸せだよ?