それからまた月日は巡り、初冬に入った。木枯らしが吹きすさび、暖房の効きも悪い室内で漫画を描いていると、芯から冷える。尚貴の袢纏がコスプレではなくなっていた。

 現実は厳しかった。

 漫画家デビューなんて遠い先の未来のように感じることばかりで、それでも歩みを止めないで、愛里と尚貴は漫画を描き続けていた。

「また落ちた。これで何度目だろう」
「ドンマイ、なおさん。次、行こう」

 励まし合って、机に向かう。季節が変わっても、やることは変わらない。

「……落ちてばっかりだ……」
「まだまだ、改善の余地あるよ。頑張ろう!」
「うん……」

 仕事が終われば家の中に缶詰めになって、ひたすらに原稿に向かう。尚貴は次々に漫画を描き上げては果敢に新人賞に挑戦したものの、ことごとく落選していた。

 愛里の評価はというと、少しずつ上がってきていた。やはり、自分を抑えて雑誌の好みを優先すると、結果に繋がりやすいと感じた。先日ついに佳作を取って雑誌に載った。まだそれだけでは商業漫画家としてデビューしたとは言えないものの、大きな進歩だ。嬉しくて、郡山に頼んでご馳走を作ってもらった。尚貴も、素直に祝ってくれた。

 同じ夢を追っている立場で、人の成功を祝福することは難しい。

 もしかしたら愛里に先にいい結果が出たことで、尚貴が嫉妬してしまうかもしれない、と思って初め気を遣っていたけれど、尚貴にそういう様子はなかった。逆に、どうやったらいい結果が出るか、教えてほしいとまで言ってくる。